Q & A


●受験勉強を始めるにあたって


Q. 美大入試を目指すためには、 いつ頃から実技練習を始めるのがよいですか?

 

高校1年生か2年生で始めることをお薦めします。

美術系の実技は、音楽方面の実技のように幼少の頃から始めなければいけない、ということはありません。高校生になってから始めて充分に間に合いますが、国公立大学や倍率の高い私立大学など難度の高い試験に合格するには、早く始めるのが有利であることも確かです。私立の総合型選抜(AO)入試では夏休み明けに入試があります。また実際の高校生活では、中間・期末のテスト、文化祭などの行事、クラブ活動などに時間が割かれますので、高校生活と受験勉強を無理なく両立させるためにもゆとりを持って練習を開始することが望まれます。

実技練習は単に受験勉強にとどまらず、大学に入ってから必要な基礎力を身につけるために不可欠なものです。当アートスクールは将来につながる確かな基礎力を育むような指導を心掛けています。1年生でまだ始めていない人も、2年生になったら具体的に実技練習を始めることを考えてください。まずは春、夏、冬の講習会を体験してみるのもよいでしょう。

 

Q.  高校3年生なのですが、今から始めるのは遅いですか?

 

上記のように早く始めるほうがもちろんよいのですが、3年生から始めるのは遅くて間に合わない、という訳ではなく、集中して練習すれば合格レベルに達することが出来ます。事実、今までにもそのようなかたちで志望校に合格している人はたくさんいます。その場合にまず大切なのは、目標をしっかりと定めることと、必要な練習量を優先して確保することです。

 

Q.  クラブ活動と両立させることはできますか?


クラブ活動を行っていると必要な時間を実技に割り当てる事ができずに、どうしても遅れがちになります。とは言っても、一度しかない高校生活でクラブ活動に熱中することもゆずることのできない大切なことです。当アートスクールでは個人別カリキュラムを組み立てて、クラブ活動との両立を図ります。学期ごとに実技のコースを選択していただきますが、途中からコマ数を変更して練習量を増やしたり、減らしたりすることができます。クラブ活動中は少ないコマ数ながらも継続して練習することで基本を身につけておいて、引退してから練習量を増やすことで集中的にレベルアップしていくことができます。

 

Q.  国公立の芸大美大に行くには浪人しなければいけないと聞きましたが本当ですか?

 

必ずしもそうではありません。これまでの指導経験から得たデータでも、現役生の合格人数が浪人生よりも2倍ほど多いという結果があります。(全体的に現役生の受験者数が浪人生よりも多いからということもあるのですが。)もちろん、実技の練習量を多くとれ、学科の勉強を絞り込んでできる浪人生は合格しやすい状況ではあるのですが、結果的には現役生でもしっかり合格できています。それは志望校と状況に配慮した個人別対応の指導を行って来た成果です。ただし試験は水ものですので、私立大を受験せずに国公立大に志望を絞り込む場合は、浪人もできる環境を整えておく必要があります。共通テスト用の学科対策も日頃からおろそかにしないようにしてください。

 

Q.  将来やりたいことがまだはっきり決まっていないのですが。


「美術の方向へは行きたいものの具体的に何をやりたいかはっきりしない」という場合でも、美術の勉強をやり始めていると、練習をするうちに美術・デザインに関する興味が膨らみ、やがて自分の適正や方向性が徐々に見えてきます。

どんなジャンル、職種があるのか、具体的にどんな作業や仕事をするのかなど、気になる大学のオープンキャンパスに足を運んだり、アートスクールにある資料を見たり講師から話を聞いたりして、いろいろ知っていくうちにやりたいことが見えてきます。東京藝術大学をはじめとする他の国公立芸大のように志望段階から専攻をはっきりさせて実技練習に取り組まなければならない大学もありますが、京都市立芸術大学のように、美術科、デザイン科、工芸科という大きな枠組みで入学し、それぞれの基礎を勉強してからさらに細かなコース選択ができる大学もあります。また、秋田公立美術大、尾道市立大、富山大、教育大の美術専攻などのように、入学して一通り体験してから美術、デザイン、工芸などの専攻を選択できる大学もあります。

 


●アートスクールでの授業に関すること


Q.  芸大・美大のための受験勉強はどのようなことをするのでしょう?

 

国公立大学の場合は、たいていの場合、共通テストと実技試験が課せられています。(建築系では共通テストと実技試験に加えて個別に学科試験が課せられることがあります。また教育系では個別の学科試験の代わりに小論文が課せられることがあります。)共通テストと実技試験の配点の割合は大学や学科によって異なります。

実技試験では主にどのような問題が課せられ、それに対して当アートスクールではどのように取り組むのかということの概要は「課題の概要(授業内容)」のページに書きましたので、そちらの方をご覧ください。

当アートスクールでは主に実技、小論文、面接などの練習をしていきますが、適時学科の方の勉強の進行状況なども確認し、アドバイスしていきます。

 

私立大学では、総合型選抜(AO)、推薦、一般などの入試機会や学科別に細かく受験内容が変わっていることがあります。関西の私立大では学科試験も選択制になっています。大体の場合、専門の課題が一つ課せられるか、得意な課題を一つ選んで受験できる大学が多いようです。(関東の私立美大では一般入試がメインで、学科2科目、実技2課題というのが標準です。)

まずは各志望大学・学科の試験内容への対策を視野に入れて勉強していくことになります。ただ同時に、大学へ入った後に活躍できるような力を身につけておく必要があり、準備期間に余裕のある場合は、直接入試に課せられなくとも基礎的なデッサンや色彩などの練習にも取り組んでもらうこともあります。

 

特に総合型選抜(AO)入試では、専門的なスキルが必要な入試ではないことも多いため、各大学では総合型選抜(AO)入試合格者に対して、入学までに大学での勉強に必要な基礎を身につけるための「入学前課題」を課しています。そうした「入学前課題」やデッサンや色彩などの基礎を、総合型選抜(AO)入試合格後にもアートスクールに通って練習する受講生もいます。

 

Q.  志望校はどのように選ぶといいのでしょう?

 

自分がやりたい勉強の方向性が定まっている場合は、それができる大学かどうかが重要になります。その上で、国公立か私立か、下宿できるかどうか、どれくらい実技練習に時間を取れるのか、浪人できるかどうかなどの条件をもとに、各受講生と保護者の方、学校の先生、当アートスクールの講師などが相談しながら絞り込んでいくことになると思います。

 

自分がやりたい勉強の方向性がまだ定まっていない場合は、まずは大学のウェブサイトなどや資料を取り寄せたりして情報をできるだけ多く集めるのが肝心です。資料を見ているうちに興味のある学科にたどり着くかもしれません。まずは当アートスクールの講師にご相談ください。また、「リンク」ページに国内で美術・デザイン・工芸などを学べる主な大学・学部・学科を挙げておきましたので参考にしてください。(リストアップした大学・学部・学科はそれらを全て網羅しているわけではありませんのでご注意ください。またこれ以外にも美術・デザイン・工芸を学べる専門学校があります。)

 

興味のある大学・学科がいくつか見つかったら、オープンキャンパスに出向いて直にその大学の雰囲気を感じたり、展示されている作品などをみたり、教職員の方と面談して自分の疑問点などを話し合ってみてください。私立大学では春の早い段階から一年を通して数回、国公立大学では主に夏に1回、オープンキャンパスの機会を設けています。

また、毎年2〜3月頃、各大学の卒業制作展が市内の美術館や大学キャンパス内などで開催されます。各大学の特徴を知る上で大変有効な機会ですし、大学で開催されている場合はその大学の雰囲気を知る機会でもあるので積極的に観に行ってみましょう。

大学の良し悪しは、一般的な認知度の高さ、規模の大きさ、競争倍率の高さなどで測れるとは一概に言えません。落ち着いて制作に励める環境があるか、尊敬できる教員や仲間に巡り会えるかどうか、学生をフォローする体制が整っているかなども重要だと思います。何より自分自身が4年間その大学で頑張れるかどうかをイメージしながら志望校を選んでもらえればと思います。

当アートスクールでも適時授業の中で面談していきますが、それ以外にもご質問等があれば講師に遠慮なくご相談ください。

 

Q.  志望校を途中で変えることはできますか?

 

もちろん変えることができます。志望校が変わればすぐに対応して、カリキュラムも組み立て直していきます。第一志望と併願校とのバランスも常に考えていきます。 当アートスクールでは国公立大志望のコースや私立大志望のコース、あるいは油彩志望のコースやデザイン志望のコースというように、志望校別にコース設定を分けていません。少人数制の特色を生かして個人それぞれの志望に対応して行きます。

 

Q.  第一志望の大学以外もいくつか受験するほうがよいのでしょうか?

 

受験校は第一志望一本にしぼった方が集中して実技練習できて良いのですが、浪人ができないなどの事情で、現実にはいくつかの大学を併願することが多い状況です。その場合でもたくさん受験すれば合格しやすい、というわけではなくて、実技内容がバラバラなところを併願すれば共倒れの危険がでてきます。当アートスクールでは入試内容の情報と過去の実績、個人の状況を照らし合わせて、併願する場合も適切なアドバイスを行っていきます。

 

Q.  休んだ授業の振替はできますか?

 

はい、できます。体調不良や学校の定期試験、行事で休むこともありますので、別の日に来ることができれば振替をしてもらっています。

 


●将来のことなど


Q.  芸大美大を出て、就職はできますか?

 

芸大美大に進学したら就職先がないと思われている方も多いようですが、そんなことはありません。

 

まず、デザインというジャンルは社会的な仕事なので、デザイン科の学生は就職活動をして企業のデザイン部やデザイン会社・デザイン事務所、広告代理店、建築設計事務所などに就職します。一定期間企業で働いてから独立し、自分の事務所を開業する人もいます。

美術・工芸の卒業生で就職していない人は、アルバイトをしながら美術・工芸の作家を目指すなどの理由で就職活動をしていないからで、就職先がないわけではありません。美術・工芸の学生もデザイン関係の会社・デザイン事務所や企業のデザイン室で働いたり、小学校、中学校、高校、大学、専門学校、美術教室などで指導者になったりしています。それ以外にも、たとえば日本画出身であれば文化財や美術品の保存修復、仏画工房、染織関係、ゲームのキャラクター制作など、その緻密な描写力が活かせる仕事があります。彫刻ならば博物館の模型やフィギュア制作、舞台美術、インテリア、店舗のディスプレイや建築の内装に関わる造形など、その能力が活かせる仕事もあるのです。工芸科なら木工、漆工、染織、陶芸、ガラス、彫金、ジュエリーなどの各種の工房に入って働く人もいます。

 

また、直接の専門外の職業に就く人もいます。私の知る限りでも、例えば絵画の専攻から造園、IT関係、舞台美術、照明家、ダンサー、学芸員、研究者、マンガ家、編集者、仏師、映像関係などの仕事で活躍している人がいます。
どのような職業に就くにせよ、大学で制作に打ち込む中で磨いてきた美的な感性や、物を作り上げる上で培ってきた知恵や力は様々な業種で必ず生かされますし、また、制約のある中でも創造的な力を発揮して状況を良いものにしていく芸大美大出身者はこれからも社会から求められていくと思います。

 

今は昔と違って大学でも、国公立、私立を問わず就職活動に力を入れて指導しています。就職を希望する人は、まずは大学・専門学校でしっかりと勉強し、様々な活動に取り組んでいく中で実力をつけること、その上で大学・専門学校の就職担当の方などの意見を取り入れながら早くから積極的に動いていくことです。

 

Q.  才能がないから無理だろうと反対されました。


 

まず言えるのは、努力し続ける能力さえあれば、芸大美大に進学することができます。大学でしっかりと勉強していく中で自分の適性・方向性を見極めることが大切です。 確かに一流の美術家やデザイナーになるためには才能が必要ですが、しかしその才能というものは努力し続けること、自分の好きなことに心底打ち込んでいくことの中にしか存在しないということも確かな事なのです。何もしないうちから才能の有無に悩んで、勉強を始める前にあきらめてしまうのはもったいない事です。まずは好きかどうか、が大事です。自分が好きだと思えることに心底打ち込んでいく中で開花する才能、見えてくる適性というものが必ずあるはずです。努力し続ける能力があるか、やり続ける事ができるか、それを試してみて下さい。