台湾中南部の嘉義にある故宮博物院南院では、「甲子萬年」と題して故宮博物院創設100周年を記念した展覧会を開催しています。その記念展の目玉として、北宋時代(960年〜1127年/日本では平安時代中期〜後期頃) の名画3点、范寛「谿山行旅図」、郭熙「早春図」、李唐「萬堅松風図」が展示されているのですが、特に「谿山行旅図」と「早春図」は私の人生の中で一度はどうしても生で観ておきたかった絵なのです。
故宮博物院に納められている古い書画はもっぱら保存と継承が目的なので、展示による傷みを防ぐため一般の目に触れる機会は5〜10年ごとに数週間だけに限られています。この「谿山行旅図」と「早春図」も前回展示されたのは、コロナ禍の最中の2021年の限られた期間のみでした。その時は海外への渡航は厳しく制限されている時期だったため泣く泣く台湾行きを諦めましたが、今回の展示は無理をしてでも絶対観ておきたいと思いました。
SNSで今回の展示の情報を確認するや否や、急いでパスポートとエアチケットを取り、六角舎アートスクールの2学期授業が終了して冬期講習が始まるまでの短い期間を利用して台湾への2泊3日の旅程を組みました。
故宮博物院南院のある嘉義は台北から高速鉄道で1時間半ほど。台北のホテルを朝早く出て高速鉄道に乗り、駅前からバスに乗って美術館には開館前に到着しました。嘉義の故宮南院は台北の故宮北院とはかなり趣の異なるモダンで巨大な内部空間を持った建築です。チケットを買うのにも全く時間がかからずすぐに展示室に直行できたので
(会場ボランティアのおじさんの親切なナビゲートのおかげで)、あまり観客も多くない静かな展示室で目当ての絵画をじっくりと鑑賞することができました。
范寛「谿山行旅図」、郭熙「早春図」、李唐「萬堅松風図」という3点の絵画のために特別に用意された広々とした展示会場の中で、足が棒になるまで観続けました。
生で目にした「谿山行旅図」も「早春図」も、観れば観るほど不思議な絵でした。観続ける中で、1000歳にもなる古老たちから大事な教えを頂きました。
故宮南院で立ち尽くして棒のようになった足を引き摺りながら高速鉄道で台北にとって返し、そのまま台北市立美術館で開催中の「台北ビエンナーレ」に。
前回台北を訪れた2017年の年末にもこの台北ビエンナーレを観ましたが、その時は台北市立美術館が改装中で、台北當代藝術館での開催でした。
台北ビエンナーレは、たくさんの台湾の若い作家が参加している(海外からの招待作家もあり)現代アートの展覧会で、前回観た時に台湾のアートの現在をすごく感じることができて面白かったので、今回もこの台北ビエンナーレを観るのをもう一つの目的にしていました。台北市立美術館は台北當代藝術館に比べてかなり展示空間が広い上に、絵画、彫刻、インスタレーション、映像など、所狭しとさまざまなタイプの作品が詰め込まれていてさながら迷宮のようで、軽く迷子になったような気分を楽しみながら会場を巡りました。
それにしても台北市立美術館は入場料が安い!(大体150円くらい。台北ビエンナーレのような特別展も通常展示も特に入場料は変わらないようです。) 台北の物価自体は日本と比べてさほど大きな違いがあるとは思えませんが、故宮博物院南院も入館料は700〜800円くらいだったし、文化的なものに対して経済的な部分から敷居を低くすることで、美術館を市民に対して広く開かれたものにしようという意図を感じます。
台北ビエンナーレもおしゃれな若い人たちや家族連れなどでかなり賑わっていました。彼らが日本に来て美術館に入ろうとしたら入場料の高さにびっくりするんじゃないかな〜。
台湾滞在最終日の朝は、前回同様、台北で一番大きなお寺、龍山寺にお参りした後、空港へと向かいました。
後から知ったのですが、嘉義はお茶で有名な土地のようです。(そういえば、駅で見かけたイタリア人カップルが、買い込んだお茶の入った紙袋をたくさん抱えていました。)今回は故宮南院で絵を観ることがメインの慌ただしい旅でしたが、次回はもう少し余裕を持った旅程で嘉義や他の街も観光してみたいですね。(Y.O.)
