「モネ 睡蓮のとき」(京都市京セラ美術館)


会期終了間際になってようやく京都市京セラ美術館の「モネ 睡蓮のとき」展に滑り込みました。
今回のモネ展は "Monet: The Late Waterscapes" という英題が示しているように、ほぼ晩年の作品ばかりで構成されています。
私は、モネが晩年に白内障を患って視力がかなり弱くなってしまって、色彩や筆触が絡み合って形が判然としなくなった時期の絵、特に本展では第4章(「交響する色彩」)にみられるような作品が好きなのです。
セザンヌが「モネは一つの眼に過ぎない。でもなんと素晴らしい眼だろうか」と称えたそのモネの眼が、思うように見えなくなってしまったことで、恐ろしい苦しみに襲われたであろうことは想像に難くありません。でも、今回久しぶりにその時期の絵を実見して、そんな中でもやはり絵を描き続けたこと、そして、見えないながらも、今かろうじて見えているものをなんとかそのままにキャンバスに写し取ろうと奮闘しているモネの姿が見えて、あくまでも「眼の人」であろうとする画家の姿に感動を覚えました。
そして展覧会の最後の最後に素晴らしい絵がありました。庭からバラの植え込みの向こうに自分の家を望む構図で描いた連作のうちの1点です。この絵を描き上げた時(1924年完成とされている)には、モネはすでに手術を受けて視力をある程度回復していましたが、それでもやはり林やバラの植え込みや自宅や空など、混然としています。愛した庭も、描いている自分も、全部溶け合って一つになっているかのようなそんな絵の中に観ている私も巻き込まれていきながら、モネが到達した世界を感じました。(Y.0.)

 


「モネ 睡蓮のとき」展は、京都市京セラ美術館での会期終了。

その後、豊田市美術館へ巡回(6/21〜9/15)。

https://monet2025-toyota.com/