日本民藝館/東京カテドラル聖マリア大聖堂



今回の東京行きではヒルマ・アフ・クリント展以外には特に観に行きたいと思う展覧会がなかったので(ファーガス・マカフリー東京でのキーファー展のことは知らなかったので残念)、これまで気にはなっていたけれど訪れたことのなかった場所に行ってみようと思いました。一つは駒場の日本民藝館、もう一つは目白の東京カテドラル聖マリア大聖堂です。
日本民藝館は、柳宗悦に興味を持つ者としてはもっと早く訪れなければならない場所でしたが、何故か行きそびれていました。「民藝」の提唱者である柳宗悦の収集した、日本のみならず世界各地の様々な生活用具や絵画などがテーマごとに分けて小部屋に整然と展示されています。展示品は時々入れ替えられているようで、今回は私の見たかった李朝の白磁の大壺は展示されていませんでしたが、その重厚な木造建築物の隅々や展示されているものたちの一つ一つに柳やその意志を継いだ歴代館長の美意識を感じることができました。

東京カテドラル聖マリア大聖堂は、丹下健三の建築で、今年献堂60周年を迎えるとのことです。何かのおりにこの聖堂の内部の写真を目にして衝撃を受け、いつか直にこの空間を体験したいと思っていました。そして今回実見したわけですが、やはり凄かったです。
この凄さをどういう言葉で語ればいいのか。あえて言えば、「峻厳な信仰が純粋にそのままかたちとして結晶したかのような・・・」という言葉がかろうじて浮かんできます。内部にも外部にもほとんど装飾がないことで、よりそのような印象を強く感じさせられるのです。また、会衆を覆うように斜めに急角度で立ち上がるコンクリート打ち放しの壁(それも60年の歴史の中でかなり凄みを増した表情の)が、迫害されて洞窟の中で祈りを捧げていたころの原始キリスト教の記憶を想起させもします。

一見非常に単純明快にコンクリートの壁体を構成した建築に見えますが、よく見ると建物を構成している内部空間の壁は全て緩やかな3次曲面で、決して無骨なだけでなく、人々の祈りを受け止めそれをまっすぐに立ち上げるかのような、隅々にまで計算された非常に繊細な建築でもあることがわかってきて、昨日観たヒルマ・アフ・クリントともども、抽象的な形の組み合わせによってこれほどまでに精神性を表現できるのかと、造形芸術の可能性をあたらめて再確認しました。

 

この日は夕刻から献堂60周年記念のパイプオルガンのコンサートがあり、私が訪れた時はそのリハーサルをやっている途中でした。聖堂内に響くオルガンの音を聴きながら1時間以上もその空間を体験させてもらいました。
(※聖堂内は撮影禁止のため、今回アップした聖堂内の写真は東京カテドラルのHPからのものです。)(Y.O.)