2023年度3学期授業と 2024年度春期講習の作品より




六角舎アートスクールでは、3月16日(土)に2023年度3学期授業が終了し、19日(火)からの春期講習で2024年度のカリキュラムがスタートしました。

3学期の目標は、受験生は国公立入試に向けての追い込みをしていくことです。1〜2学期に時間をかけて課題に取り組むことでつけて来た力を受験の現場で発揮できるよう、それぞれの志望校の入試問題を想定した課題を、共通テスト明けからの約1ヶ月の間(後期試験を受ける受験生は2ヶ月近くの間)、毎日6時間以上(直前講習の時間帯を含めて)集中して取り組んでもらいました。

また、私大の一般入試を受ける受験生にはできる限り課題を想定して取り組んでもらいました。

美術系高等学校を受験する中学生も、試験が実施される2月中旬までデッサンとイメージ表現の課題に集中して取り組みました。

受験生ではない受講生にとっても、3学期はこれまで積み重ねて来た練習の成果が形となって現れてくる時期です。受験生に比べると練習回数は少ないですが、練習の進み具合を見ながらそれぞれにステップアップしてもらえそうな難度の課題に取り組んでもらいました。

2023年度3学期授業と2024年度春期講習で制作された作品の中からいくつかをご紹介します。


1)一番上のデッサンは基礎コース生が3学期に描いた作品です。作者は高校2年生ながら既に色々な卓上モチーフを描いてきて実力をつけてきているので、今回は少し目先を変えて鉢植えの観葉植物に取り組んでもらいました。全体をバランス良く四つ切り画用紙の画面に収めるところから、葉や茎の形状を生き生きと捉えること、葉っぱの重なりの空間や前後の関係など、いつも以上に意識しながら描かないと混乱したわかりにくいデッサンになってしまいます。

作者は時間をかけて上のような注意点をクリアしながら、観葉植物の硬い葉の質感なども丁寧に描き、何より植物が凛々しく立ち上がる様子が感じられるような印象的なデッサンとして仕上げました。

 
2)2番目のデッサンは、新3年生が春期講習で描いたデッサンです。水の入ったビアジョッキを一番前に持ってきて背後のシュロ縄やストライプ紙ナプキンとの前後関係を作るダイナミックな構成になっています。あまり背の高くないモチーフを前方に持ってくるとかなり大きく描かなくてはならなくなるので難度が上がりますが、作者は水面の表情や水の部分のレンズ効果、底や持ち手のガラスの厚みの表情など細部まで丁寧に観察し描き上げました。また、ビアジョッキと色の濃いシュロ縄との前後関係もうまく表現しています。
 
3)3番目のデッサンは数ヶ月前から練習を始めた受講生が春期講習中に描いたデッサンです。生茶のボトルは角柱と円錐が相関した形態で、特に肩周辺の面が細かく変化してなかなか難しいのですが、作者は丁寧に観察しうまく解決しています。また、底の反射による表情も捉えています。木の角柱は直方体の基本的な面をしっかり作って立体感を出した上で木目や節などの表情を描き込みリアリティを出すことに成功しています。作者はまだデッサンの枚数こそ少ないものの、毎回集中して取り組むことで急速に成長してきました。


4)ラムネビン、紙風船、荒縄の着彩写生は、国公立大学の日本画専攻を志望している新3年生が春期講習中に制作したものです。透明水彩を用いた着彩写生に本格的に取り組むのはほぼ初めてだったのですが、まず丁寧に細部までデッサンで下描きした上から少しずつ慎重に透明水彩を重ね、時間をかけて仕上げまで持っていくことができました。紙風船のシワの表現がやや大味になってしまいましたが、それぞれのモチーフの固有の色や素材感をしっかり感じさせる良い仕上がりになりました。今回は四つ切り画用紙で描いてもらったのですが、次第に大きな画面でたくさんのモチーフを配置して描いてもらうことになります。合格を目指してたくさん経験を積んでいきましょう。


5)1番目の色彩課題は、国公立大学の色彩課題の想定問題で、あるテーマを元に円と円弧のみで構成しベタ塗りで表現するものです。作者はテーマに基づき、リズミカルな要素の配置と流れるような動きで画面を効果的に構成し、的確に明度設計をして透明感に富んだ魅力的な画面を作りました。特に、複雑な構成でありながら色面の面積の配分が大変素晴らしい作品だと思います。

 

6)2番目の色彩課題は、ある短い詩を読んでイメージを展開する課題で、新中学3年生が春期講習中に制作した作品です。汽車の青の濃淡でうまく立体感を表現しているところや、青の色調が単調にならないように緑やオレンジなどでうまく表情をつけています。また雲や地面の草などは筆を使ったタッチの工夫によって的確に表現しています。

 

7)3番目の色彩課題は、あるお話を読んでイメージ表現するもので、中学2年生が3学期授業の中で制作した作品です。いつもは八つ切り画用紙でイメージ表現の課題を練習してもらうのですが、これは3学期最後の課題なので倍の大きさの四つ切りの大きさでやってもらいました。作者は物語の中から最もダイナミックなシーンを選び、下描きの段階から画面の大きさを生かして慎重に構成を考えた上で、時間をかけて彩色していきました。何度も色を重ね塗りしたり、細かいタッチで色を付け加えたことで大変深みのある色彩表現になっています。何より、画面からキャラクターが飛び出してきそうな迫力のある力作になりました。


六角舎アートスクールの新学期授業は、4月9日(火)から順次始まります。
 
今年度に受験を控える受講生、そして来年度以降に受験する予定の受講生、それぞれの立場で新しい気持ちで頑張っていきましょう。我々スタッフもこれまでの経験や反省を糧にしながら皆さんを一生懸命サポートしていきます。(Y.O.)