1学期授業と夏期講習のデッサンと色彩より


六角舎アートスクールでは8月21日に、3週間にわたる夏期講習が終了しました。

(15日に台風7号が近畿地方を通過したために夏期講習が休校となり、21日に代替授業を行いました。)

平常授業では土曜日以外は夕方からの3時間の実習時間ですが、夏期講習では午前中から6時間の実習なので、普段より歯応えのある課題にじっくりと取り組むことができます。また1日程6日間を連続で受講することで、その期間は集中して実技練習に向き合うことになり、そうした期間を経ることでやはり実力がアップしてきます。

国公立志望の受講生、夏休み明けにある私大の総合選抜入試の準備をする受講生、美術系高校志望の中学生などの他、来年度以降に受験する高校1、2年生など、受講生の目標や状況は様々ですが、夏期講習では、それぞれの受講生のこれまで培ってきた力をさらに充実したものにできるよう進めました。


今回は、1学期授業と夏期講習中に制作されたデッサンと色彩課題の中からいくつかをご紹介します。

1)1枚目はGW中の自宅課題として取り組んでもらった「パイナップル」のデッサンです。作者は高校3年生ですがまだ実技練習を始めて日も浅く、基本的なデッサンカリキュラムが一通り終わったくらいの段階だったので、いきなりGW明けにこのような素晴らしく充実したデッサンを提出してくれて大変驚かされました。ホームページ内の「受講生専用ページ」にあるパイナップルのデッサンの連続解説なども参考にしてくれたと思うのですが、それにしても恐ろしく迫力のあるデッサンです。モノを観る集中力がすごい強度で凝縮している、とでも言うべきでしょうか。もちろん技術的にはツッコミどころはあるのですが、そんなものはもはや瑣末なことです。作者は「これで私のGWはなくなりました」と笑っていましたが、モチーフを食い入るように見つめている作者の姿が目に浮かぶようです。久しぶりに心から感動させられました。

2)これは京都市立芸大の過去問題です。奥行き感を強調した大胆な構成や、半透明ビニールやチップスターの中身のアルミの質感などの表現もしっかりと描き切れています。作者は高校2年生ですが、このデッサンまではしばらく構成の感覚や描き進める感覚が本人的にしっくりいっていなかったようなのですが、このデッサンでさらに飛躍しました。

3)これも京都市立芸大の過去問題で、夏期講習に参加してくれた高校2年生の作品です。円筒形のモチーフは横に倒すと、形を取ったり構成上の同一平面を出すなどの難度が高くなりますし、このモチーフのように変則的なラインが入っていたり、モチーフの数が多くなってくると、形を取るだけでもなかなか大変だったと思います。作者は粘り強く取り組んで、形や質感などを注意深く観察し描き切ることができました。

4)4枚目はある程度練習の進んだ受講生に取り組んでもらっている、「黒電話」をなるべく精密に描く課題です。黒電話は複雑な形態を掴むのが難しいので、描きながら微妙なラインやパーツの構成をしっかり理解する必要があります。また、深い黒の色や反射光などのトーンとともに光沢のある質感を表現するために、様々な種類の鉛筆を使ってタッチを重ねながら密度感を出していかなければなりません。作者は、特にダイヤル周辺のたくさんの楕円の形態などに苦労していましたが、粘り強く観察し、丹念に鉛筆を重ねて充実したデッサンに仕上げました。

5)最後はラボルトの石膏デッサンです。作者は高校2年生でこれが2枚目の石膏デッサンだったのですが、1枚目での欠点を修正して大きく形を掴んだ上で、面の変化に伴うトーンを丁寧に観察し充実感のあるデッサンとして仕上げました。


6)色彩作品の1枚目は、色彩の基本課題の一つで、窓辺に置かれた器物などをテーマに主にベタ塗り(にじみ、ぼかしなどを使わない)で表現する課題です。作者は限定された条件の中でイメージを膨らませ、背後の森林の表現や器物の質感などにこだわりを持って表現しました。

7)2枚目も基本課題の一つで、いくつかのキーワードの中からピックアップして組み合わせてテーマとし、色彩によって表現する課題です。キーワードから発想していく際にどれだけ細部まで具体的なイメージを持ち、それを色彩(絵の具)を使って現実に目にみえるようにしていくか、という表現研究の側面を持った課題です。作者はそれぞれのキーワードから独自にイメージを膨らませてバランスよく構成し、繊細かつ力強い画面として表現しています。

8)色彩の最後は中学2年生の作品で、猫をテーマにした詩を読んで発想し独自のイメージで表現する課題です。作者はとにかくどんどんイメージが浮かぶ天性の発想力がありますが、それを適切に表現するための構成力や絵の具の扱いなどの技術力が伸びてきました。この調子でどんどん楽しい絵を描いていってもらいたいと思います。


上で紹介した作品以外にも1学期〜夏期講習中には、充実したデッサンや色彩、立体などの作品がたくさん制作されました。


六角舎アートスクールでは、8月29日(火)より2学期授業が始まります。
 
2学期に入るとすぐに私学の総合選抜入試(体験授業型や面接型)が始まります。国公立や私学の総合選抜入試や推薦入試も間近に迫ってきますし、来年2月の国公立一般入試や美術系高校に照準を定める受験生も試験をリアルに感じつつ年内にできる限り力をつけておきたい時期になってきます。
 
また、来年度以降に入試を控える1、2年生も夏期講習を経てぐっと力がついてきます。
 
それぞれの受講生が目標に向かってさらに飛躍できるよう、2学期も頑張っていきましょう。(Y.O.)