2022年度3学期授業終了


3月18日(土)に3学期授業が終了し、六角舎アートスクールの2022年度の過程が終わりました。

3学期の目標は、受験生は国公立入試に向けての追い込みをしていくことです。1〜2学期に時間をかけて課題に取り組むことでつけて来た力を受験の現場で発揮できるよう、それぞれの志望校の入試問題を想定した課題を共通テスト明けからの約1ヶ月の間(後期試験を受ける受験生はそれ以上の間)、集中して取り組んでもらいました。

受験生ではない受講生にとっても、3学期はこれまで積み重ねて来た練習の成果が形となって現れてくる時期です。受験生に比べると練習回数は少ないですが、練習の進み具合を見ながらそれぞれにステップアップしてもらえそうな難度の課題に取り組んでもらいました。

2学期から3学期にかけて制作された作品の中からいくつかをご紹介します。


1)一番上のデッサンはある国公立大学の留学生試験の練習として取り組んだ課題です。この大学の留学生試験のデッサンは、静物がモチーフとして課されるのか、あるいは人物なのか石膏像なのか、何が課されるのかの情報がないので、静物を中心に全てのモチーフを練習しました。作者は持ち前の対応力の高さでこのような木炭デッサン以外にも鉛筆デッサンや油彩などさまざまな課題をこなし、比較的短い期間で力をつけていきました。このデッサンは明暗のコントラストがやや強いせいで生硬な印象を与えますが、隅々にまで丁寧な観察が行き届いた秀作だと思います。

 
2)2番目のデッサンは国公立の建築系大学受験のために練習していた受験生の作品の一枚です。視点や光源の方向を適切に設定し、出題の条件を踏まえた上で効果的な構成が工夫できていると思います。また短い制作時間の中で、鉛筆のトーンによる光の表現が印象的な作品になっています。
 
3)3番目のデッサンは京都市立芸術大学のかなり前の過去問題です。四つ切り画面の中に比較的大きなモチーフを収めなければならないため、モチーフの配置には工夫が必要です。またモチーフの重なりによってごちゃごちゃした印象を与えないよう、その状況をよく理解しながら描かなければなりません。この作品ではモチーフの重なりによって生まれる明暗のトーンをしっかりコントロールし、力強いデッサンとして仕上げています。


4)1番目の油彩は、美大進学を目指して練習していた大学生が秋頃に制作した作品です。まだ試験時間の制限を気にせず、じっくりと時間をかけて制作できる時期のもので、形やパースの甘さなどに難があるものの、丹念に描き込んでいく中で見出した色彩や素材感が重厚な迫力を生んでいます。
 
5)2番目の油彩は、9月の私大の総合型選抜入試に合格した高校生が、大学入学までの期間にさらに練習を重ねておきたいと制作した作品です。白い発泡スチロール板の上に色々なモチーフが配置されているのですが、それぞれのモチーフの関係性が丁寧な観察と描き込みによってしっかりと捉えられているのはもちろん、発泡スチロールの白さの中にモチーフからの反射によってさまざまな微妙な色合いが表れているのを丁寧に再現しようとしているところが秀逸です。全体として作者の持つ爽やかな色彩感覚が発揮された気持ちの良い作品になっています。


6)1番目の色彩課題は、京都市立芸術大学の過去問題で、みかんをモチーフにして滲みを生かして色彩表現する課題です。この課題に先立ち、六角舎アートスクールでは毎年夏頃に、滲み、ぼかし、筆触などを生かして色彩によって画面作りをするワークショップ形式の課題をやっています。今年の京都芸大の色彩課題は、与えられた刷毛による効果を活かした画面作りを求められるものでしたが、こうしたいわゆる定番から外れたかに見える課題にも柔軟に対応するためには、色彩構成の基本を踏まえながらも、色彩を扱う上で発見した知識や技術を「経験知」として蓄積していくことが重要だと考えます。

 

7)2番目の色彩課題は、猫をテーマにした詩を読んでイメージを展開する課題で、中学1年生の作品です。宇宙を躍動する猫の形もユーモラスですが、白い猫の毛に薄い黄色、青、紫などの色彩を微妙に溶け込ませて柔らかさと立体感を与えているところや、宇宙の青、地球の青、猫の目の青など、青の色の質を変えることで単調な絵にならないような工夫がされているところなど、目立たないところが重要なを効果を生み出しています。

 

8)3番目の色彩課題も、ある短い詩を読んでイメージ表現するもので、中学2年生の作品です。作者はアクリルガッシュに混ぜ合わせる水分量をコントロールしながら、あたかも透明水彩で描いた絵のような透明感と柔らかな質感を持った絵を描きます。この作品も小さい画面の中に丁寧な筆遣いで可愛らしいキャラクターや室内の状況が描き込まれ、ユーモラスな作品になっています。


21日からは春期講習会が始まり、六角舎アートスクール2023年度の過程が始まりました。
 
23年度に受験を控える受講生、そして来年以降に受験する受講生、それぞれの立場で新しい気持ちで頑張っていきましょう。我々スタッフもこれまでの経験や反省を糧にしながら皆さんを一生懸命サポートしていきます。(Y.O.)