私の選ぶ本の7日間・6日目


”GENESIS” Sebastião Salgado (Taschen 2013)

 

私がセバスチャン・サルガドの名前を知ったのは、日本でサルガドの写真集『人間の大地 労働』(岩波書店 1994) が出版され、新聞の書評で紹介されていたのを読んで直感的に「これは買わなきゃ」と思ったのが最初でした。
それ以来、サルガドの写真集が日本で出版されることもなく、実物の写真を見る機会もなかったのですが、ある時ネット上でこの「GENESIS」の出版予定を知り、内容もちゃんと知っているわけではないのに「これは買わなきゃ」と思って予約しました。

 

まず、「GENESIS」というタイトルに衝撃を受けたのですが、届いた本を開け、中に収められた写真の数々を見てさらにやられてしまいました。

南極から始まり、パタゴニア、ガラパゴス、ニューギニア、マダガスカル、アフリカ、北極そしてアマゾン・・・。

手付かずの大自然と動物たち、そしてそれらと共存する人類の姿が、美しく精緻なモノクロ写真で500ページ以上にわたって収められています。

 

この「GENESIS」の撮影過程は映画「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」(ヴィム・ヴェンダース監督 2014)や自叙伝「わたしの土地から大地へ」(河出書房新社 2015)にも描かれていますが、そういう予備知識がなくとも収められた写真を見るだけで、今ここに生まれたままの大自然をまっすぐに見つめ、それをできるだけ完璧な形で写真に定着しようとするサルガドの意志を強く感じます。

 

昨今、あまりお目にかかれない壮大な芸術作品だと思います。

 

ところで、5年前にイタリアを旅行した時に、ヴェネツィアでサルガドの新作「夢の芳香ーコーヒー世界への旅」の展覧会を思いがけず観ることができました。なんと無料の展覧会でした。ほとんど観客のいない会場で初めて観たサルガドのオリジナルプリントは、印刷された写真集よりも当然のことながらさらに精緻で美しいものでした。(Y.O.)