3学期終了



3月21日(土)に3学期授業が終了し、六角舎アートスクールの2019年度の過程が終わりました。

 

3学期の目標は、受験生は国公立入試に向けての追い込みをしていくことです。1〜2学期に時間をかけて課題に取り組むことでつけて来た力を受験の現場で発揮できるよう、それぞれの志望校の入試問題を想定した課題をセンター試験明けから約1ヶ月の間、集中して取り組んでもらいました。

 

受験生ではない受講生にとっても、3学期はこれまで積み重ねて来た練習の成果が形となって現れてくる時期です。受験生に比べると練習回数は少ないですが、練習の進み具合を見ながらそれぞれにステップアップしてもらえそうな難度の課題に取り組んでもらいました。

 


デッサン


3学期中に制作された作品の中からいくつかをご紹介します。

 

受験生は、志望校の入試を想定したモチーフを数多くこなしていくことで、これまでの練習で理解して来たことを実践の中で発揮してくことを、そして、「こういうモチーフが実際に出されたら戸惑うだろうな」と思われるモチーフや、構成など扱う上で自由度の高いモチーフにも取り組んでもらうことで、現場でどんなモチーフが出されても落ち着いて対応できることを目指しました。

 

一番上のデッサンはそういうモチーフに取り組んでもらった1点です。モチーフの点数の多さや、モチーフ細部の表情の複雑さ、構成のまとめ方の難しさなどがあっても、それぞれのモチーフを必要十分に描きつつ、最初に設定したデッサンのコンセプトに従い、描かなければならないところをしっかり描いて空間を表現することを目指したものです。

 

2番目のデッサンはケント紙に描いた精密描写で、モチーフ自体は大きなものではないものの、形や質感の違いを高い精度で描き分けること、また、モチーフ以外の「余白」の部分が緊張感を持つような構成など、成果が現れた作品だと思います。

 

3番目のデッサンは高1生の作品で、少し時間をかけて歯ごたえのあるモチーフを描き込んでもらいました。瓶の黒いトーンの変化の観察や、薪の側面の樹皮の部分など、粘り強く描いた成果が出ていると思います。

 

4番目のデッサンも同様で、雪平鍋の側面の打ち出し模様やオレンジの皮の表面のニュアンスなど、丁寧に観察して描き込めていると思います。これは高2生の作品です。


色彩


色彩の1番目のものは長岡造形大学の色彩の試験の対策のためにたくさん練習した作品の一点です。出されたテーマを条件に沿って形態と色彩で表現する幾何構成です。オーソドックスな課題ですが、円や三角形などの組み合わせによって生まれる色面の形とそのリズムやバランス、色彩の選択・組み合わせと明度設計によってリズム、響き、透明感などを表現していくこと、そしてベタ塗りの精度など、考えなければならないことはたくさんあり、大変奥が深い課題だと思います。

 

2番目の色彩は高2生の作品で、イメージ表現の練習課題です。ある季節を感じさせるテーマを設定し、限られたスペースの中で奥行き感を強調した画面を作る課題です。作者は、水たまりや水しぶき、紫陽花、カエル、ゴムの長靴などのたくさんの資料を参考にしながら一つの画面にまとめました。

このように、イメージ表現の課題に取り組むことで、普段日常の中で見逃している様々な形や色をあたらめて認識し直し、それを描いていくことによって、さらに日常の中での感受性を高めていくことに繋がっていくと思います。

 

3番目の色彩は銅駝美術工芸高校の過去問題で、中学生の作品です。時間はかかっていますが、イメージ豊かに発想し、複雑な構成の各要素を丁寧に描き込んだ良い作品だと思います。

 

4番目の色彩は、ある大学の入試の対策で練習していたコラージュ作品です。与えられたテーマを印刷物から切り取った要素を構成して貼り付けることで表現しますが、絵の具を使った色彩表現とは又違った、コラージュでしかできない表現を理解しつつ様々なテーマに対応できるようにします。これは何枚も練習した中で最後に制作した課題で、たくさんの要素を貼っていく中でごちゃごちゃした見え方にならないよう、大きな画面構成を設定した上で、印刷物の中から見つけた特徴的な形を反復的に構成し、エネルギッシュで楽しい作品になりました。


立体


立体は、京都芸大の対策のために、ケント紙を中心に針金、ビニール素材、発泡スチロール、粘土など、様々な素材を使った課題に取り組んでもらう中で、試験でどのような課題が出ても落ち着いて対応できることを目指しました。

あるテーマを、与えられた素材を使ってどのように表現するのかを素材の特性から発想し、素材を生かしながら美しい形や、要素同士の空間的な関係を作っていく柔軟な姿勢が大事です。

 

2点ある立体作品の上のものは、そのような京都芸大の立体の練習課題(元は東京藝大デザイン科の過去問題をアレンジしたもの)の中の1点で、ケント紙と紙風船とトレーシングペーパーを使って「空気」というテーマを表現するものです。

 

最後の写真は、受験生のものではなく、高1生に取り組んでもらった油土による手の模刻です。立体を制作する上では、デッサンのように1方向から見るだけではなく、360°様々な方向から見て形のつながりを感じていく意識が必要ですが、丹念に自分の手を観察して模刻していくことで得た多面的な形の捉え方を、次の立体を制作する際にはもちろん、デッサンを描く際にもフィードバックしていって欲しいと願っています。


24日からは春期講習会が始まり、六角舎アートスクール2020年度の過程が始まります。

 

今年度に受験を控える受講生、そして来年以降に受験する受講生、それぞれの立場で新しい気持ちで頑張っていきましょう。我々スタッフもこれまでの経験や反省を糧にしながら皆さんを一生懸命サポートしていきます。(Y.O.)