(前回の続き)国立新美術館の「セザンヌーパリとプロヴァンス」展と「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」を観た後、歩いて六本木の森美術館へと向かいました。
森美術館は六本木ヒルズ森タワーの53階にあります。僕が観に行くイ・ブル展と同時に「ONEPIECE」展を開催中で、その広告がやたらと目立ちましたが
もちろん、イ・ブル展の案内もありました。
森美術館へは、エレベーターで森タワーを50数階まで昇った後、展望台やレストランがあるエリアを経由して行かなくてはなりません。展望台からは上空から東京の街並をぐるっと眺めることができて壮観です。
もちろん、開業したばかりの東京スカイツリーも見えましたよ。
さてイ・ブル展ですが、この韓国出身の女性作家が活動を始めた80年代から現在までの主要な作品をテーマごとに展示していて、各部屋もそれなりに見応えがあり、全体的にいい展覧会だと思いました。この人は多分僕と同世代だと思いますが、生まれ育った場所は違えども何か同時代のパラダイムを共有してきたという感じが作品から感じられ、何だか親近感がありました。また、とにかくいろいろなことにアイディアを持っていてそれをどんどん形にして行っているという印象で、非常に豊かなバイタリティーを感じました。
展覧会の最後にヴィデオでイ・ブルさんのインタビュー映像が流されているのですが、自分自身の個人的な問題意識を作品化することによって普遍的なものへと昇華させようという意思がその語り口からも感じられ、共感しました。
まあ、作品の内容そのものとはあまり関係がないかも知れないんですが、天井から吊り下げられた彫刻作品の影が地面や壁に落ちている様子や、新作の嘔吐する犬の嘔吐物(プラスチックやガラス、ビーズなどで出来ている)が光を反射して部屋の壁面に不思議な模様を描いている様子が特に美しかったです。(Y.O.)
(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2012年5月31日付けの投稿を転載したものです。)