オットー・ネーベル展/京都文化博物館

オットー・ネーベル展に行ってきました。

 

オットー・ネーベル (1892-1973) という画家のことはこの展覧会で紹介されるまで全く知りませんでしたが、展覧会のフライヤーによると、シャガール、クレー、カンディンスキーなどに影響を受け、また実際に彼らと交流しながら自己の作風を確立させ、ドイツとスイスを拠点に制作し活動した画家であるとのことです。
確かにフライヤーに大きく載っている絵はクレーに似ていますし、紹介文だけを読めばクレーやカンディンスキーのエピゴーネンなのかな?と思って、気になる展覧会だとは思いながらも後回しにしてしまっていました。
気がついたらとうとう展覧会が最終日になってしまったので、日曜日の教室が終わってから急いで徒歩15分の京都文化博物館に観に行きました。

 

行ってみてわかったことは、これはいろんな意味で興味深い展覧会だ、ということでした。
その大きなものとしては、これはオットー・ネーベルの展覧会でありながら、彼が出会ったバウハウスの芸術家たちを紹介するものでもある、ということです。建築や演劇、詩といったネーベルがもともと持っていた素養がバウハウスという新しい芸術運動と出会い、その交流の中でどのように絵画として現れ出たのかということが一つの焦点になっているように思えますが、同時にネーベルを起点にバウハウスをめぐる芸術家たちの関係(の一部)が浮かびあがってくるようでもあります。


私たちは、ある作品が偉大な先達のそれに似ていれば「何だ真似っこじゃないか」と思いがちですが、実際はそう簡単な話ではないでしょう。ある文化的な状況の中で影響関係は一方向にだけ流れるものではないでしょうし、時代的な要請によって必然的に近い表現になる、ということもあり得るでしょう。バウハウスをめぐる芸術運動の中での目には見えない影響関係はごまんとあったでしょうし、バウハウスを生み出したような文化的状況や時代の要請がネーベルの素養と結びつき、絵画として現れ出たと考えてもいいのではないか、と思いました。

 

また、今回の展覧会で象徴的に取り上げられている「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」(1931年)のように、光と、ある都市を構成する空間や素材から生じる色彩を、色の面として還元して記録していく試みや、3次元的な存在である建築物を2次元の絵画に変換して行く際にどのように色彩を扱うのかなど、受験の色彩構成にも役立ちそうなアイディアもありました。

 

ネーベルの絵画の独自性としては、色面を構成して行く際に細かなハッチングのタッチを重ねて行くことによって色彩的なニュアンスや並置混色的な効果を生み出していることがあるように思います。そうした技法が(上で言ったような)3次元的な空間を2次元の絵画に変換する際にうまく機能している作品と、技法が形骸化して単に装飾的で表現が硬くなってしまっているように見えるものもあり、その違いも興味深く見ることができました。

 

この展覧会には、ネーベルが影響を受けたとされるシャガール、クレー、カンディンスキーらの作品も数点展示されていたのですが、とりわけクレーの出品作品は線描のみのものから「プルンのモザイク」のようにカラフルなものまでどれも印象深いもので(観たかった「腰掛ける子ども」や「都市の境界」が展示替えで観れず残念)、やっぱり観に来て良かった~と思いました。

オットー・ネーベル展は終了してしまいましたが、図録は教室に置いてありますのでまた見て下さい。(Y.O.)