PLANKTON - 漂流する生命の起源(京都市美術館別館 2階)

 

5月22日まで京都市美術館別館で開催されていた「PLANKTON - 漂流する生命の起源」という展覧会に行ってきました。これは京都市内の様々な会場を使って行われていた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2016」というイベントの一つで、クリスチャン・サルデ(写真・映像)、高谷史郎(インスタレーション)、坂本龍一(サウンド)という3者のコラボレーションによるものです。

 

 

フランス国立科学研究センター名誉ディレクターでプランクトンの研究者であるクリスチャン・サルデ氏の撮影した美しいプランクトンの映像をモチーフに、アーティストの高谷史郎氏が音楽家の坂本龍一氏とともに静謐なアート作品に仕立てています。

 

 

導入部分に展示された数々のプランクトンの写真を経て、メインの会場ではたくさんの薄いモニターが床に直に設置されており、そこに動くプランクトンの映像が映し出されています。その様子を一つ一つモニターを廻って眺める観客や、会場の両サイドに設営された階段状のベンチに腰を下ろして少し高い位置から全体を見渡す観客もいます。そして、坂本氏によるアンビエント・ミュージックが会場を包み込んでいます。

暗い会場に浮かび上がる微小な、しかし驚くほど多様な生命体の有様はそれだけで見入ってしまう魅力があるのですが、今回の展示ではそうした凝視を許さないような工夫があるようです。それぞれのモニターに映し出されたプランクトンの映像は、短い間隔でストライプ状の映像に変換されたり、そのストライプの中から再び現れたり、そして全ての映像が同期して、全てストライプ状のノイズに変換されホワイトアウトしてしまうタイミングがあります。プランクトンの運動とともに、そうした映像の運動を追いながら、私も会場中のモニターの周囲を動き回っていました。

 

 

クリスチャン・サルデ氏の著作は日本でも『美しいプランクトンの世界』(河出書房新社・2014年)が刊行されています。近いうちにその本も読んでみたいと思っています。(Y.O)

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2016年5月24日付けの投稿を転載したものです。)