イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その4(パラティーナ美術館/ ラファエロ「大公の聖母」)

 

9月20日昼過ぎからは、ベッキオ橋を渡ってアルノ川の南、ピッティ宮殿の中にあるパラティーナ美術館にラファエロの聖母子像を観に行きました。

 

 

この聖母子像は「大公の聖母」と呼ばれているそうで、2年前の東京でのラファエロ展の目玉として日本で公開されていましたが、そのときは観ていません。しかし、その展覧会のフライヤーに大きく印刷されたこの絵の複製は、仕事場の常に目に入る場所にあり、折りに触れて観て感銘を受けていました。

 

 

パラティーナ美術館を訪れるのはなぜか今回が初めてだったのですが、入るや否や絵画が壁に3〜4段掛けになっているいかにも貴族の館風の展示にびっくりしました。そしてそんな部屋を進んで行くと、雑多な展示の中にまぎれてひっそりとお目当ての絵がかけられていました。そのあっけなくもさりげない掛けられ方にまたびっくりしましたが、あまり観客の注目を集めていなかったおかげで細部に至るまでじっくりと観ることができました。

 

 

とにかく丁寧な描写と柔らかいトーンに感心します。そして画面が放つ微光。眼をこらして至近距離から見たり、窓からの光に反射させるようにして斜めから見てみると、透明な絵の具を細い筆でビッチリと描き込む事で精妙なトーンを作っている事がわかります。

 

 

ただこの絵は、そういう技術的な事だけでは語り尽くせない、ラファエロの良いところが凝縮された作品だと思いました。(Y.O)

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2015年10月24日付けの投稿を転載したものです。)