京都・大徳寺曝涼

 

 毎年10月の第二日曜は、大徳寺所蔵の書画の「曝涼」(虫干し)が行われることになっています。しばらく前にそのことを知ってからこの日を楽しみにしていました。

 大徳寺に行ってみると、秋の観光シーズンということもあって普段公開されていない塔頭の庭なども公開されており、たくさんのお客さんが来ています。
 僕はまっすぐに虫干しが行われている方丈に向かいます。入場料を払って入ってみると、それぞれの部屋にたくさんの書画がずらりと掛けられ、風に揺れています。この日ばかりは国宝や重文を含む名品もガラス越しでない状態でかなり間近に見ることができるのです。

 第2室の正面に目当ての作品が掛けられていました。南宋時代の画僧・牧谿の「観音猿鶴図」です。
 月並みですが、やはり傑作というほかありませんね。墨のトーンが薄い部分が多い上に、全体に薄墨がかかっているせいか一見地味なんですが、比較的少ない手数でありながら的確にものごとの有様を描ききっているところが見事で、見れば見るほど味わいが増してきます。

 正面の観音像の、薄暗い洞窟の空間の湿り気や微光の絶妙なトーン、ほのかに浮かび上がる観音様の衣服の線のニュアンスやお顔の表情の生き生きした様など、やはり実物を見なければ充分には伝わらないものです。お猿の絵の方は、木を描く筆の運びが面白く、大きな画面の中でお猿の形態が空間的に機能している様などなど・・・、足が痛くなるまでじっと絵の前に立ち尽くし味わってきました。(y.o.)

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2008年10月12日付けの投稿を転載したものです。)