京都芸大入試対策


京都市立芸術大学は全国に7つある国公立の芸大・美大の中で、関西圏にある唯一の芸大です。その歴史の古さ、自由で進取の気風に富んだ校風、一学年135名という規模の小さな大学ながら芸術の世界で活躍する卒業生を多数輩出していることなどから、高い人気を集めています。

当アートスクールでは、個人別カリキュラムを採用しているため、制度としては「京都芸大コース」というものを設けていませんが、京都芸大を志望する受講生のために、30年以上に渡る京都芸大入試の指導経験とノウハウの蓄積を生かしたプログラムを用意しています。

このページでは、京都芸大の入試の特徴と、各課題別の出題傾向やその対策の概要を説明します。                                                    六角舎アートスクール


入試の特徴

1.3課題の全受験生共通実技(※総合芸術学科を除く)
京都市立芸術大学入試の最大の特徴は、他の芸大と違って科ごとの試験がなく、総合芸術学科を除く美術科、デザイン科、工芸科の美術学部志望者全員が同じ実技試験を受けることです。1日目が「鉛筆デッサン4時間」と「色彩3時間」、2日目が「立体3時間」になります。それぞれ250点満点で実技合計750点満点、これにセンター試験(美術・工芸500点、デザイン700点)が加算されて合否が決まります。

※総合芸術学科は「鉛筆デッサン4時間」(250点満点)と「小論文2時間」(200点満点)を1日で行い、センター試験(600点満点)を加算して合否を決めます。

2.すべての科に共通する造形の基礎力を問う
例えば科ごとに試験を課す大学では、それぞれの科の専門性を入試に盛り込みます。京都芸大では各科ごとの専門試験がないかわりに、すべての科に共通する造形の基礎力と感覚を問います。


3.実技点数に上下の開きが大きく、得点率60%弱の低い合格ボーダーライン
京都芸大の実技は、平均点がかなり低いのが特徴です。1科目あたり250点満点のうち100点以下の得点が多く、満点に近い点数の受験生がいる一方で、250点満点の40点台、100点満点に換算すると20点前後という、他の大学では考えられない低い点数が出る場合もあります。中間的な点数が少なく、1科目内の上下の差がかなり大きくなっています。その結果、センターも含めた最終合否のボーダーライン(合格最低点)は得点率60パーセント弱という数値となっています。

4.すべてに高得点を取らなくても合格できる
センター試験、デッサン、色彩、立体の4種類の課題のうちの2種類で高得点を取った人は、他の2種類が比較的低い点数でも合格しています。また、高得点は取れなくても4種類とも6~7割の点数を取って合格している人もいます。すべてに高得点を取らなくても合格できる大学です。
ここで言う高得点とは8割以上の点数、実技では200点近くからそれ以上を言います。しかし
京都芸大では、6割の150点前後でも合格に貢献する良い点数になります。


 

対策

実技採点の上下の開きが年々エスカレートしていること、09年からのセンター科目増加を考えると、センター試験である程度点数が取れている方が合格しやすい状況です。また、3種類の実技をそれぞれしっかり練習していく必要がありますが、その上で、出題の意図を汲み取って取り組んだ作品が高得点を取っています。各自の得意な分野をしっかり伸ばした上で、積極的かつ柔軟に課題に取り組む態度が望まれます。

1.センター試験
'09年度入試からセンター入試の科目数が増え、従来の3教科から、美術科・工芸科は4教科、デザイン科は数学必須の5教科になりました。実技と学科の比率は、美術科・工芸科では従来の6:4のままですが、デザイン科では実技750点に対しセンター700点と、ほぼ半々の比率になります。特にデザイン科はセンター試験の学科対策が重要です。(総合芸術学科は実技450点、センター600点なので学科重視となります。) 一方で、センター試験が5割弱しかなくても実技で高得点を取って合格しているケースもあります。センターの点数が低くてもあきらめてはいけません。しかし、あまりに低いと実技で1つの取りこぼしもできない、きびしい状況になります。7割以上の得点をめざしておきたいものです。


2.デッサン

京都芸大が公表している2018年度入試における描写の「評価のポイント」には、モチーフの構成、画面の構図、形態の把握、量感の把握、空間の把握、明暗の把握、質感と固有色、素材と技法の理解、などを踏まえた基礎的な描写力を評価する、と非常に丁寧にポイントが記されています。これらはデッサンを描く上で考慮すべき必要不可欠な要素です。これらを練習を積み重ねる中でしっかりと理解した上で、様々なモチーフや出題に柔軟に対応できる力が求められていると言えます。

 

まずは、意図を持って与えられたモチーフを生かす構成し、それを4時間という限られた時間の中で細部まで丁寧に描き込む力が必要です。日常生活の中でよく見かける既製品や生ものが幅広く出題されていますが、色の白っぽいもの、モチーフ自体に存在感の薄いもの、それでいて細かく描くところの多いもの、かっちりした形態以外にも不定形やひずんだかたちのものもよく出題されます。透明なビニール袋、紙類、アルミ質のような光を反射するもの、また、リンゴ、レモンなどの丸い果物もよく出題されます。白いものはちゃんと白く表現すること、微妙なトーンのあり方を正確に観察すること、そのために画面全体を大きく捉え、モチーフのトーンや空間の関係性を最初から意識して立ち上げていく描き方を身につけることが大切です。

 

3.色彩
色彩では、造形的な基礎である「きれいな色の組み合わせ」と「構成力」を身につけた上で、表現の意図を明解に打ち出すことが問われます。傾向としては、簡単な言葉がテーマとして与えられる自由なイメージ表現が多かったのですが、近年は構成条件に円('09年度)や直線('10年度)が入ってきたり、2012年度入試では”直交する水平・垂直の直線のみによる分割、1面1色で塗る”というきわめて基礎的な構成条件で出題されました。また2019年度入試では、横長の画面に直線のみを使ってベタ塗りによって「メロディ」というテーマを表現するという問題でした。

2013年度は「花」をテーマにモノトーンの貼り絵を施し、それを絵具の色彩に置き替える課題でした。また、かぼちゃ('11年度)、ロープ('15年)、みかん('16年)などといったモチーフが与えられそれを用いて表現する課題も出題されます。幾何形態による構成、明度設計などの基礎力を身につけた上で、その他の様々な出題('06年度/絵の具を3色に限定、’07年度/色紙を選んで貼る、'17年度及び'18年度/銀紙、白黒の厚紙を貼る、など)にも柔軟に対応できる力をつける必要があります。
 

4.立体
紙を素材にした出題が多いのですが、木材、竹ひご、針金、粘土、タコ糸、スポンジ、布などの異素材やそれとの複合素材で出題されることもあります。また、名刺カード('14年度)、ストッキング('11年度)、ストロー('10年度)、わりばし('01年度)、紙コップ('05年度と'07年度)と、既製品を素材に使った出題もされています。'19年度はダンボール箱とノートが与えられ「解体と再構築」というテーマのもと立体構成するというまさに既製品だけが材料の出題でした。'12年度は粘土による写実的な模刻が出ましたし、'18年度は紙粘土による立体構成でした。いろいろな素材にひととおり慣れておくことが必要です。
造形のポイントは、与えられた空間を十分に生かした上で、意図をはっきりさせて構成することです。欲張っていろいろ付け足した装飾的な作品では評価されません。抽象化しながらも単純すぎない、よく練り上げられた形態と、その組み合わせを練習してください。2013年度から時間が4時間から3時間に短縮されたので、短い時間で完成させることに慣れておきましょう。

 

5.   小論文

総合芸術学科はデッサンと同日に2時間の小論文の試験があります。問題の形式は、まず芸術や文化に関する短い論文やエッセイ(あるいはその抜粋)を読み、その要約、文章中のあるセンテンスの意味などを問う問題、そして提示された文章のテーマに関連する内容の小論文を書く問題など、3問出されることが多いです。

課題の文章は、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」からの抜粋、中原佑介の彫刻論、ヴォリンガーの「芸術を説明すること」に関する論文の抜粋、寺田寅彦の芸術と科学との関係を述べたエッセイ、「でも、これがアートなの?-芸術理論入門」という現代の芸術思潮を紹介した本からの文章、丸山真男の「日本の思想」からの抜粋など、芸術・文化をめぐる幅広い内容に及んでいます。

勉強の方法としては、まずはこうした文章に慣れることが重要です。その文章の中で最も大きなテーマとなっているものを読み解き、その論旨を短くまとめる力が求められます。さらには、そこで問われているテーマを踏まえて豊かな発想で、かつ読みやすく、説得力のある形で小論文を書く練習をする必要があります。

2018年度の入試では、中谷宇吉郎の「雪」に関するエッセイ(「自然の恵みー小国民のための新しい雪の話」)が出され、文章の中に入れるイラストを描くという(やや意表をついた)問題も出ました。また、これまで出されたことのなかった鑑賞問題(クールべの「漁船」1865  メトロポリタン美術館蔵)が出題されたことなど、様々な形式に柔軟に対応できるような力が求められます。

 

受験勉強に限らず、芸術・文化全般に常に興味を持って接していくことや、世界で起こっている出来事に関心を持つこと、さらには生活の中での様々な発見を大切にしつつ、それらを書き記していく習慣を身につけてください。